大角度の内斜視を伴ったDuane症候群I型への上下直筋全幅移動術
および内直筋後転術の効果
( 田中三知子 )

 本論文は、国立成育医療研究センターにおいて、大角度の内斜視を伴ったDuane症候群I型の2症例に、内直筋後転術と、上下直筋全幅移動術(西田法)を併施した経過を報告したものである。
西田法は、滋賀医科大学の西田保裕によって考案された、外転神経麻痺の手術法で、この術式の特徴は、上下直筋を切腱、あるいは分割せずに、筋腹の1/3を、耳側の強膜に結紮固定することによって、新たに外ひきの張力を生み出すことにある。
従来、Duane症候群I型の内斜視には、内直筋後転術の単独施行、または筋の付着部の切腱を伴う上下直筋移動術が行われてきた。内直筋後転術は、手術が簡便で侵襲が少ないことが利点であるが、矯正効果が不足する欠点があった。また、上下直筋移動術は、西田法と同様に、新たな外ひきの張力を生み出す利点があったが、手術侵襲が高く、合併症として上下斜視を発生させる危険性があった。
本論文で我々が報告した内直筋後転術と西田法の併施は、直筋の切腱を最小限にとどめることができ、大角度の内斜視を伴ったDuane症候群I型の2症例に満足な眼位矯正効果と、異常頭位および外転運動の改善をもたらした。術後合併症として軽度の内転制限が見られたものの、その他の合併症は見られなかった。


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