加齢黄斑変性モデルマウスの解析  ( 橋爪公平 )

 加齢性眼疾患は眼科領域で頻度の高い疾患であり、なかでも加齢黄斑変性 ( AMD ) は高度な視力低下を来たし、先進国において中途失明の上位を占める。我が国の有病率は 50 歳以上の 1% 弱、高齢化社会を迎え今後増加することが予想される。 現在のところ AMD の発症機序は明らかになっていない。 近年の臨床研究 では、 抗酸化ビタミン大量摂取による進行の抑制や、喫煙、高血圧、光損傷が危険因子であることが報告され、その発症機序に酸化ストレスが関与していることが示唆されている。
  これまでに申請者らは、網膜色素上皮細胞で活性酸素のメジャーな消去因子である SOD1 ( Super Oxide Dismutase 1 )遺伝子のノックアウトマウス( KO マウス)で、ヒトの AMD と同様の網膜変性および脈絡膜新生血管が生じることを明らかにした。( Imamura Y, Noda S, Hashizume K et al. Proc Natl Acad Sci 2006 )さらに今回の研究で、 SOD1 KO マウスにおける組織学的解析および生理学的解析続けて行った。
  組織学的解析では、 KO マウスでは、外顆粒層では 30 週齢から、内顆粒層では 50 週齢から細胞数の減少がみられた。(左図は 60 週齢マウス)さらにその細胞死に関して、 apoptosis に関連する検索 (TUNEL 染色、 activated caspase-3 の免疫染色・ Western blotting) を行ったが、野生型マウスと KO マウスの間に有意な差は認めなかった。一方、電顕像では、 KO マウスで、外顆粒層・内顆粒層ともに細胞の膨化、ミトコンドリアの変性などが認められ、その細胞死への necrosis の関与を示唆する所見を得た。
  生理学的解析は、網膜電図 (ERGs) を用い、 KO マウス・野生型マウスともに週齢とともに、 a 波、 b 波の振幅の低下が認められたが、その低下は KO マウスでより顕著であった。
  以上のことから、 SOD1 KO マウスは年齢依存的に網膜細胞の減少、網膜機能低下をきたし、その細胞死には necrosis が関与していることが明らかになった。
  また SOD1 KO マウスが活性酸素制御機構の破綻による網膜細胞変性モデルとして有用であること、酸化ストレスが網膜変性に深く関わっていることが、本研究でさらに強く示された。

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