AZOORの眼底自発蛍光所見および光干渉断層計所見 ( 藤原貴光 )

 Acute zonal occult outer retinopathy (AZOOR) は 1992 年に Gassが報告した疾患で、いまだに正確な病態はまだ解明されておりません。今回、AZOOR の患者に最新型の眼底自発蛍光 (fundus autofluorescence; FAF) および光干渉断層計(optical coherence tomography; OCT)を行って所見を検討し、AZOOR の病態について調査しました。
2007 年 1月 1 日から 2009 年 2 月 28 日までに、the Vitreous, Retina, Macula Consultants of New York を受診した患者のうち Gass の報告に基づいて AZOOR と診断された患者を対象とし、FAF 検査および OCT 検査を行ってその所見を検討しました。AZOOR 患者は 11 例(女性 10 例)19 眼、平均年齢 49.1±13.9 歳でした。FAF の異常は 19 眼中 17 眼で検出されました。視神経乳頭周囲に病変をきたす例が最も多く、FAF で検出された病変の範囲はOCT で異常がみられた範囲よりも狭くなっていました。9 眼では FAF の低蛍光領域が 69.7 か月の経過観察期間中に進行拡大しました。AZOOR 患者の網膜の動脈径は91.8 (±21.5) μm で、17 眼 (89%) で正常よりも網膜細動脈が細くなっていました。AZOOR 患者の中心窩での平均視細胞厚は 177 μm で、control 眼よりも有意に薄くなっていました (193μm, P= 0.049)。異常な網膜の層構造は 12 眼で検出され、この異常層構造は視細胞が減少および消失している部位でみられました。中心窩脈絡膜厚は 243μm で正常でした。
 通常、FAF は RPE 細胞の中のリポフスチンの分布をとらえます。そして一般に自発蛍光の減少は RPE 細胞の消失か損傷を示します。今回の患者での自発蛍光の異常は RPE の損傷をほのめかしています。我々は 6 例 9 眼で経過中に低蛍光の領域が進行したことを見つけました。このことは FAF は AZOOR の経過中の進行をモニターするのに有用であることを示唆しています。
 AZOOR complex とよばれる全ての病気に共通する異常は視細胞の損傷のようです。Li と Kishi は AZOOR の 5 例 7 眼にタイムドメインの OCT を用いて検査し、視野欠損と ONL の消失を伴った患者に IS/OS の異常を見つけました。スぺイドらは(AZOOR, MFC, MEWDS と定義した)AZOOR complex の 18眼を SD OCT を用いて検査し、盲点拡大の異常が IS/OS の異常に関係していること、さらには AZOOR の患者では著しく ONL が減少していることを見つけました。今回の AZOOR 17 眼における検討では視細胞の異常が見られました。すなわち視細胞層の厚さの減少は中心窩においてでさえみられ、中心窩から離れた眼底の後極部においてはさらに著しく視細胞の厚さが減少していました。以前の論文に一致したことに、IS/OS line は今回の検討でも異常を示しました。これらの所見は AZOOR では視細胞が標的であることを示唆しています。
 今回の患者においては、脈絡膜厚は正常でした。網膜内層の厚さには特別の異常は見られませんでしたが、視細胞が消失した領域の上方では網膜の層構造に異常がみられました。これらの所見は、過去の AZOOR の患者での電気生理学的検討でみられた網膜内層の機能低下を示唆する結果に一致します。人間における網膜の異常な層構造は、常染色体優性遺伝の網膜色素変性、コロイデレミア、レーベル先天盲でも報告がなされてきました。AZOOR は網膜の厚さを含む、異常層構造が報告される初めての後天性疾患のようです。
 AZOOR の患者の網膜細動脈の径は、19 眼中 17 眼で細くなっており、過去の報告の割合よりも予想外に多いものでした。この所見は AZOOR の病態生理の新しい概念を立ち上げます。視細胞が消失した状態における網膜では、高酸素状態は網膜循環の減少を引き起こすことが、動物での検査で証明されています。視細胞層の消失と正常な脈絡膜を考えると、AZOOR における網膜内層の破壊と網膜細動脈の狭細化は、持続的な脈絡膜の血流供給による過剰な酸素によって引き起こされる酸化ストレスで生じるのかもしれません。抗酸化剤の大量投与が AZOOR の進行性の網膜変性に対して治療方法になるかもしれません。視細胞の急速な障害とその結果、網膜内層に生じる長い期間の変性の変化は、Gass が急性疾患と考え、他の著者たちが慢性疾患と考えたことを説明するかも知れません。

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